丹後×ブルターニュ海の知恵の交流 Cross The Border Project報告会

2023年3月30日、ATARIYA Tango Innovation Hubにて「丹後×ブルターニュ 海の知恵の交流 Cross The Border Project報告会」が行われました。
この記事では、ブルターニュ視察ツアーの概要と報告会でメンバーから発表された視察を通しての学び、また今後の展望について紹介します。

目次

  1. 1.ブルターニュ視察ツアーに至るまでの経緯
  2. ❶海洋高校交流会
  3. ❷Cross The Border Food Chat
  4. ❸視察ツアー
  5. 2.ブルターニュ視察ツアーについて
  6. ■目的
  7. ■ミッション
  8. ■視察メンバー
  9. ■視察場所
  10. 3.ブルターニュ視察ツアー 学び

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1.ブルターニュ視察ツアーに至るまでの経緯

❶海洋高校交流会

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京都府立海洋高校とブルターニュの海洋専門学校の学生同士がオンラインでそれぞれの文化や、海の課題を共有し漁業の知恵を伝え合うオンライン交流会を行いました。

❷Cross The Border Food Chat

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Cross The Border Food Chat

「海の京都」である京丹後と、フランス最西端「海のフランス」に位置するブルターニュ地域圏のパンマールという2つの地域。半島という地理的に共通点の多い両地域から食材を送り合い、2022年2月5日、オンライン上で互いに送り合ったものを楽しみながら食を通じての交流を行いました。

❸視察ツアー

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Cross The Border Food Chatでフランスパンマールの市長等とオンラインで交流した後、先方から「日仏アソシエーション巴の中で皆さんの滞在期間中の費用を負担していただけるので、是非次回は現地視察に来てほしい」とご招待いただいたことがこの視察のきっかけでした。
渡航費については日仏笹川財団よりご支援いただき、出発までの様々な調整や現地での視察などをパンマールに在住の日仏間コーディネーター早川さんにお世話になり今回の旅が実現しました。

2.ブルターニュ視察ツアーについて

■目的

海の京都・海のフランスが互いの魅力を共有し、深い関係人口へと育てる
これからは地域の文化・知恵としっかりつながっていく「教育滞在型ツアー」において国際的に注目が高まっています。
このプロジェクトは、似通った地形や文化である丹後とブルターニュの海のキーパーソンが交流し、漁業・教育・ツーリズムの視点で互いに学び合える関係人口へと育てることを目的として行われました。

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■ミッション

漁業・加工食品・教育・ツーリズム・海洋保全の観点でブルターニュの視察を行い、両者の学び合えるポイントや次につながるアイデアを探る。

■視察メンバー

<ツーリズム>(株)ROOTS:曽 緋蘭・中山 慶
<ツーリズム>(一社)Tangonian : 長瀬 啓二
<教育>京都府立海洋高等学校:長岡 智子
<食品加工>合同会社tangobar :関 奈央弥
<漁業>本藤水産:本藤 脩太郎

■視察場所

▶パンマール市長・市議会メンバーとの交流
▶パンマールの卸売り市場や缶詰加工品会社 Oceane Alimentaire
▶ビジネススクール EMBA Business School
▶カンペール・コルヌアイユ・デブロップメント Quimper Cornouaille Développement
▶ルギルビネックの漁業博物館 Musée de la Pêche (Concarneau)
▶ルギルビネック海洋高校 Lycee Maritime Guilvinec
▶海藻類加工会社 Aquab Marinoë
▶枕崎フランス鰹節工場  Makurazaki France Katsuobushi
▶ヨーロッパ海洋教育センター CEFCM
▶イロワーズ海洋自然保護区 Parc naturel marin d’Iroise

3.ブルターニュ視察ツアー 学び

❶漁業市場・制度と海産物

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まず始めに本藤水産 漁師の本藤さんから、視察により学んだブルターニュと日本の漁業市場や漁業制度の違い、海産物について発表していただきました。

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サンゲノレ-パンマール市場で水揚げされた海産物たち
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オンライン競りが導入されていたり、海産物がQRコードで管理されていたりと日本と比べてかなり先進的です
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フランスでは、漁師がしっかり収入を得られる仕組みや資源管理型漁業の仕組みなど、日本においても参考にするべき点が沢山あることを学びました。
本藤さんのように若く次世代を担う漁師が、こうして他国のケースも取り入れながら日本の漁業環境をより改善していくことが出来ればいいですね。

❷食品加工の学び

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続いて合同会社tangobarの関さんより、自身も丹後の食材を使った缶詰の開発や販売を行うという立場から、ブルターニュの食品加工の現場を訪れて学んだことを共有していただきました。

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OCEAN ALIMENTAIRE
海藻乾物/海藻の塩/海藻のお茶/海藻由来の化粧品など、海藻を使用した商品を扱う缶詰ショップ
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MARINOE
海藻の素晴らしさを伝えたい という熱い思いと探究心に溢れたオーナーが手がける海藻加工品店
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SCARLETTE LE CORRE
海藻をこよなく愛するスカーレットさんのお店
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Makurazaki France Katsuobushi
枕崎で鰹節製造を営む会社の方々を中心に、 ヨーロッパで鰹節を販売するために設立

今回ブルターニュ地方にある食品加工の現場やお店を巡り、他国の食材と日本の食材を掛け合わせた商品開発の可能性やヒントを得ました。
この視察を通して、フランスでは「日本食」=「健康」というイメージが特に強いということが分かりました。このことから健康文脈での商品のプロモーションや、日本の加工技術やレシピをシェアする事で、現地の食材の活用の可能性を広げることが出来ると感じたそうです。
今後tangobarでこの視察を経てどのような商品が開発されるのか楽しみです。

参加者の皆でブルターニュの缶詰や瓶詰商品の試食会も行いました!

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ブルターニュの美味しい物産を前に参加者の皆さんとの会話も弾みます

❸フランスの海事教育の学び

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続いて京都府立海洋高等学校 教諭 長岡さんより、フランスの海事教育について学んだことを発表していただきました。

【視察先】
ヨーロッパ海洋教育センター:
私立の海事系職業訓練校で、貿易、漁業、港湾等の責任者養成を行っている
ル・ギルビネック海洋高校:
職業訓練所+研究機関。海事、医療・救難、魚屋のコースがある
ハリオティカ漁業博物館:
1階に水産卸売市場、2階が博物館となっており、漁業や漁師という職業について楽しく学べる
EMBAビジネススクール:
商工会議所直轄専門学校でアジア圏の言語と英語、経済を学ぶことが出来る

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ル・ギルビネック海洋高校視察の様子

これらの視察を通して、フランスでは職業やプロフェッショナルに対する考えや仕組みが日本と全く異なるということを学びました。
また、フランスでは職業選択の際に教育と現場が直結しているのが特徴だといいます。
例) 漁師になりたい     → 船舶免許と漁業権がセット
   大型船の乗組員になりたい→ 水夫コースから学習を積み上げ

最後に今後の展望として、下記の3点をあげていただきました。
① ル・ギルビネック海洋高校との国際交流を続けていきたい
日 本 側から:魚介類の締め方(Ikejime)、海藻活用
※ブルターニュ(フランス)では、“IKEJIME”に対して、地元漁業者や市場の関心が非常に高い!
フランス側から:食の安全・安心(EUの基準)
② 視察の受け入れを積極的に行いたい
③ 食品加工分野で共同開発がしたい

❹海洋保護の学び

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続いて弊社Tangonianから視察に参加した長瀬より、海洋保護の学びについて発表をさせていただきました。

【視察先】
イロワーズ海洋自然公園

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イロワーズ海洋自然公園はフランス初の海洋自然公園で、ここの基本的な目的として、①海洋環境の知識を増やすこと②環境とそこに生息する種の保護③海洋活動の持続可能な発展への貢献 の3つが設定されています。

学び:
★海洋環境の調査(データ化)と取組の効果検証を徹底している
★地元漁師との協議やコミュニケーション、信頼関係の構築
★海洋保護と持続可能な漁業の観点での資源管理型漁業の両立している 

カンペール・コルヌアイユ・デブロップメント

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ここはコルヌアイユの都市計画および開発、観光産業の促進、主要な経済部門の発展と活性化を行う機関で、「ブルーエコノミー」の考え方をベースに、まちの持続可能な漁業や調理体験、食品加工などを取り入れたプログラムが近年注目されています。

学び:
ブルターニュの自然環境や地形、自然を活かしたプログラムの内容は丹後半島とよく似ている
★ブルーエコノミーの考えをベースに、地域の持続可能な漁業や産業、暮らし、文化、観光がそれぞれ密接につながっていて、まさに「海とともに働き、暮らし、生きている」という思想を感じた

4.今後の展望

これらの学びを通して、「天橋立を含む阿蘇海及び宮津湾を海洋保護区として漁業、観光、環境保護が共存できるモデルケースを作りたい」という今後の展望を掲げました。

この旅の終わりは、これからの海の智慧の国際交流に向けたはじまりでもあります。
今後は互いの海洋高校の生徒の交流や、漁師さんのインターンシップを互いの海で受け入れるなど、持続可能な漁業の連携となる国際パートナー育成プログラムへと繋げていければと考えています。

また今回様々な加工食品の現場を訪ね、事業者の方々と交流をすることで、丹後の食や日本の食文化×フランスの食文化といったコラボレーション商品の開発の可能性も見えました。

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コロナもようやく終息してきて、他国との交流がさらに行いやすくなった今、今後もTangonianでは様々な事業者と連携しながら、このような国境を越えた連携を続けていきたいです!

https://youtube.com/watch?v=4qYmxYB9tO4%3Frel%3D0
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水産経済新聞にこの取組について取り上げていただきました!

Writer:一般社団法人Tangonian 岸 あやか