海の京都 サスティナブルツアー

令和3年12月2日~12月4日の3日間、都市部企業向けに地域密着型のビジネスや、ビーチクリーン・アップサイクル等を通しての環境学習、また一次産業について様々な体験を通して学んでいただく滞在型研修プログラムを行いました。

【事務局】
一般社団法人京都府北部地域連携都市圏振興社(海の京都 DMO)
一般社団法人 Tangonian
楽天グループ株式会社


【参加者】
関西圏を中心とする都市部企業の経営者や従業員の方々(計8社)

Day1 環境と健康に配慮した食づくり先進企業視察ツアー

株式会社飯尾醸造(五代目当主 飯尾 彰浩 氏)

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地域と連携しながら無農薬でお酢の原料となるお米を栽培し、安心・安全の食を生産することで、製品や企業の価値を高めている株式会社飯尾醸造の酢蔵を訪問し、企業のブランディング戦略について学びました。

飯尾醸造 蔵見学

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ツアー初日は、宮津で明治26年に創業し、長年地域に愛され続けている老舗酢蔵「飯尾醸造」の蔵見学からスタート。

酢蔵の中に入るとお酢の香りが辺り一面に広がっていました。

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ここでは、飯尾さんが飯尾醸造独自のお酢の製造方法やそのこだわりについて説明して下さいました。

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飯尾醸造では、“いい酢はいい米から”という3代目、4代目の考えを大切に受け継ぎ、昭和39年から地元宮津産無農薬の新米だけを原料にお酢を作っています。

講演「競わない競争戦略 “モテる企業”のブランディング戦略」

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こだわりのお酢作りの現場を見せていただいた後は、130年近く愛されるロングセラー商品やブランディングの秘訣についてお伺いしました。

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↑ 前職はコカ・コーラで働いていた飯尾さんが打ち出したこの企業戦略は特に興味深かったです。

大手に負けないよう競うのではなく、飯尾醸造ならではのこだわりや個性を活かしてユーザーにアピールすることが重要だと仰っていました。

★米作り体験会 ~付加価値+高付加価値
以前はお酢に使用するための無農薬の米作りも蔵人により行っていましたが、酢作りに加えて米作りもとなると蔵人の負担が大きくなってしまうことが課題でした。
そこで5代目飯尾彰浩さんは、自身が東京からUターンをした際に“宮津には都会に無いものは何でもある”と改めて気付かされた経験を元に、都市部に住むお客さんに向けて米作り体験会を始めました。体験会ではこだわりのお弁当を体験とセットにする、“農作業着ファッションショー”を行いプロのカメラマンに撮影してもらう、参加数に応じてTシャツなどのオリジナルグッズがプレゼントする、などのユニークなコンテンツを導入しました。これにより年々参加者数も増え、飯尾醸造のお酢のユーザーやリピーター増加にも繋げることができたそうです。
飯尾さんはこのように“入口を大きくすることでリピーターを増やす”ことを大切に、現在もこの企画を続けています。

★創作手巻き寿司パーティー ~商品を買う+αノウハウを買う~
お酢ピクルスやイタリアンの要素を取り入れた変わり種の手巻き寿司パーティーを定期開催されています。
これにより、お客さんにお酢の様々な楽しみ方を知ってもらい、より商品に親しんでもらいたいという想いがあるそうです。

★世界シャリサミット ~宮津を世界で唯一のシャリの街に~
2019年に飯尾醸造主催で行われた「世界シャリサミット」は、世界中の寿司職人を宮津に集め理想のシャリについての講演、食べ比べ、シャリ作りの実演をするといったイベントです。 “宮津を世界の高級寿司のプラットフォーム”にしたいという思いから、敢えて人が集まりやすい東京ではなく地元宮津で開催し、地域にお金を落とす工夫もされました。

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途中飯尾醸造で扱っているお酢を数種類試飲させていただきました。
大手の出すお酢と飲み比べた時の味の深さの違いに参加者も驚かれていました。お酢ティーも美味しかったです。

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飯尾醸造直営レストランacetoにてディナー

夜は飯尾醸造直営のイタリアンレストランacetoで夕食をいただきました。

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老舗旅館の空き家をリノベーションして造られたお店

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お酢を使用したクラフトビールや地元の食材をふんだんに使用したこだわりのお料理の数々

価格帯を敢えて高めに設定することで地元の飲食店の競合にならないようにする、夜のみの営業にすることで地域の宿に宿泊客を増やすようにするなど、このレストランの運営もあくまで地域のためのビジネスになるよう工夫をされています。

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夕食では多種多様な企業が同じテーブル上で混ざり合い、様々な会話が繰り広げられました。

参加者フィードバック
・”飯尾酒造さんの事業への情熱とそれを軸に地域活性化へ展開している構想力と実現力に感銘を受けました。また地域の魅力を発信する食への展開も含めてまだまだこの地の可能性があることを身をもって体感できました。”
・”飯尾醸造さんの、体験をベースにしたブランディング方法と、それをもとに地域の活性化に繋げようとしている取組みはとても興味深かったです。地方創生は、本業以外のところでも十分可能なのだとよくわかりました。”
・”飯尾さんの「モテるお酢屋」の講義。今の時代、生活者にサービス・商品のファンになってもらうには、品質の高い商品づくりだけではなく、ビジョンを掲げ、ビジョンを体現した機会に参加してもらう<共感性>の部分を戦略的に作り上げていくことが求められていること。また、自社の売り上げだけを追い求めるのではなく、いかに地域に還元できるかという視点は、多かれ少なかれ大企業に勤める個人も意識するべきと感じました。”
・”飯尾酒造さんの地域を巻き込んだ経営理念や顧客との向き合い方は企業として参考になる点が多いと感じた。”

Day2 次世代へ海を紡ぐスタディツアー

丹後エクスぺリエンス(代表 八隅 孝治 氏)・翔笑璃(代表 澤 佳奈枝 氏)

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e-bike(電動自転車)によるサイクリングツアーや海岸清掃活動、マイクロプラスティックのアップサイクルを行っている丹後エクスペリエンスの八隅さん、シーカヤック体験やハーバリウムシェルボールペン作り体験を提供されている翔笑璃の澤さんの下で、海洋汚染について学びました。

事前オリエンテーション・e-bike体験

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e-bikeに乗車する前に、代表の八隅さんから安全面に関するオリエンテーションがありました。

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いざ出発です!

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この時期の丹後にしては珍しく当日はこの晴天。参加者の皆さんも、普段都会では体験できない美しい海岸線沿いでのサイクリングを楽しまれていました。

ビーチクリーン・ハーバリウムシェルボールペン作り

サイクリングで綺麗な海を見た後は、潮の流れによって漂着ゴミが堆積する小浜海水浴場へ。
八隅さんから、海洋汚染の現状やその深刻さ、マイクロプラスティックについて無数に落ちている漂流ごみを目の前に説明をしていただきました。

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ビーチクリーンをしてもゴミがなくなるわけではなく、根本的な解決にはならないですが、まだ大きいサイズの段階で1つでも拾っておけば、それが紫外線や波によりさらに分解されマイクロプラスティックとなり、手遅れになることは防げると言う八隅さん。

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皆でビーチクリーンをし、5分ほどの短時間でゴミ袋3袋分のごみを回収しました。

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事務所に戻った後は、シーカヤック体験を行う翔笑璃の代表、澤さんに海で拾ってきたマイクロプラスティックやシーグラスなどを入れたハーバリウムシェルボールペン作りの体験をさせていただきました。

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ランチ @守源旅館

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この日のランチは地元の老舗旅館「守源旅館」で、新鮮なお魚を使用した懐石料理をいただきました。

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また食事の後は、今回主催者として関わっていただいている海の京都DMOの村上局長より、海の京都についての概要や現状などを共有していただきました。

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講演「海洋汚染について」・Precious Plastic工房見学

食事の後は再び丹後エクスペリエンス事務所に戻り、海洋汚染の現状について八隅さんからさらに詳しくお話をお聞きしました。

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八隅さんがこの活動をされている理由のすべては「自分の息子たちが安心して遊べる海を将来に残していくため」
講演を通して八隅さんの純粋で熱い思いが伝わりました。

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講演の後は、“プレシャスプラスチック”というプラスチックごみを再利用し新たな商品に生まれ変わらすためのアップサイクル工房を見学させていただきました。

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↑ このアップサイクルのための器械も全て一から手作りしたそうです。

幼い内から海洋ゴミの問題を身近に感じ、アップサイクルの現場を見てもらう事が重要だという考えから、工房は地域の子どもたちが自由に出入りできるよう基本的に解放しているそうです。

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参加者フィードバック
・”美しい海岸沿いと漂着プラスチックだらけの砂浜の落差を目にして、マイクロプラスティックや漂着ゴミの問題を初めて自分ごととして捉えることができた”
・”アップサイクルの行程を経験し、プラスチックの再利用にかかる労力を実感したことでそもそもの消費量を減らさないといけないという気持ちが強まった”
・”今まで頭でわかっていても現実を見せられることでかなり自分事になる。”
・”今後プラスチックを使って商品開発をされているメーカーの方にこのツアーを体験してもらえると良いのでは。(自分たちの作った商品が、生活を豊かにする一方で環境に悪影響を与えるかもしれないというのを知ってもらって、今後エコと経済を両立した商品開発のきっかけになると思うから。)”

Day3 次持続可能な里海 × 里山デザインツアー

本藤水産(代表 本藤 靖 氏 / 本藤 脩太郎 氏)

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宮津の漁師本藤さん親子に、宮津湾での豊かな里海・里山を継承するための持続可能な漁業についてお伺いしました。

筏見学・漁師体験

まず初めに皆ウェダーに着替え、漁船に乗せてもらい貝の養殖をしている本藤さんの筏に連れていってもらいました。

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目の前で養殖した貝を引き上げて見せていただき、宮津湾の豊かな漁場や本藤さんの漁のこだわりについてお話をお伺いしました。

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お話を聞いていると、本当にこの宮津湾を大切に思い、環境に負荷を与えない漁を実践されているということが伝わってきました。

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ここでは実際に参加者の皆さんも貝の入った籠を引き上げて、泥を落とす作業などを体験させていただきました。体験した参加者からは、本藤さん親子は簡単そうに行っていた作業も実際にしてみると、籠の重さや船の上の揺れ、寒さなど過酷さを実感したという声があがっていました。

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船から降りた後は、船や漁具などを収容している漁師小屋を案内していただきました。

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宮津湾の豊かな漁場やそこで獲れる新鮮で多種多様な魚介の話、また本藤さんの営む週一回、1組限定の漁師居酒屋についてお話をお聞きしました。その居酒屋では獲れたての魚を自らさばいて調理しており、参加者からは是非一度食べに行ってみたいという声が多くあがりました。

講演「持続可能な漁業について」

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後半は、現在まで本藤さんが取り組まれている持続可能で環境に負荷を与えない漁についてお伺いしました。

★漁業の課題や現状について
現在国内には海外と比較して乱獲に関する厳しいルールが整備されておらず、気象変動も伴って年々天然の漁獲量が減少しています。
そこで本藤さんは資源管理型漁業の重要性を10年もの間訴え続け、ナマコの生産量と単価を上げることに成功されました。これにより現在では全国から研究者がそのノウハウを調査しに来られるようにまでなったそうです。

高齢化と後継者不足による漁師の数の減少もまた深刻な課題です。
後継者不足の大きな原因の一つが、漁業は生産者がどれだけこだわりを持って一生懸命養殖をしても、最終的には他の低品質の魚と同じ金額に統一され、混合して販売されてしまうことだと指摘をされていました。またこれにより、消費者にも生産者の顔が見えない仕組みになってしまっています。
本藤さんは農業のように、生産者の顔が見える売り方をすることが出来れば漁師の生産意欲や商品の品質向上につながり、若い世代が漁業を継承するモチベーションにつながると考えています。

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★取組
<海の森づくり>
自然は全て循環しており、海が豊かになるためには山も川も農業も守らなければいけません。山の環境を整えるためには木を伐採して山を手入れする必要があるため、本藤さんは最近チェーンソーの講習会を受け、今後は山も管理していくことにされたそうです。
伐採した木は海の中に沈めて魚たちが住むための森 “漁礁” になります。
現在この活動を観光客に向けた体験ツアーに取り入れたり、地元の高校生を巻き込んだりと、皆で宮津湾の環境を守っていく取組を行っておられます。

<宮津湾の至宝 海底の泥>
宮津湾は山からの栄養と海の栄養が混じり合い非常に栄養豊富で豊かな漁場として有名です。
その海底の泥の成分を分析してみると、イスラエルの死海の泥と類似することが分かっています。この泥は肌に良い成分が多く含まれているそうで、今後他企業と連携してパックなどのスキンケア用品として商品開発ができないか検討しているそうです。参加者の中でも商品化されれば是非使ってみたい、販促の面で是非関わってみたいなどの会話が繰り広げられました。

<環境に負荷を与えない漁業>
2日目に丹後エクスペリエンスで行ったビーチクリーンでも目立った漂流ごみの1つが、漁網でした。
漁の途中波などにより船から網が外れて漂流してしまうケースも多く、深刻な海洋ゴミの1つとなっています。そこで本藤さんは現在、生分解性プラスチックを利用した自然に還る漁具を開発しているメーカーと協議し、環境に負荷を与えない漁網作りにも携わっておられます。

宮津湾産タコ試食・musubiランチ

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講演の後、地域の食材をふんだんに盛り込んだmusubiさんのお弁当と、本藤さんがご用意して下さった獲れたての宮津湾産タコをいただきながら、参加者を交えて「本藤さんが行っている活動や想いを発信していくにはどのような方法が良いか」「本藤さんが獲るお魚や貝のブランド名アイデア」などの意見交換が行われました。

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参加者フィードバック
・自然環境、特に海の大切さを実感するとともに、一次産業のさまざまな現状課題を肌で感じる1日でした。豊かな海を守るということの裏にある後継者問題や既得権益者問題、行政問題など本当に重層的に問題があることを話を聞いて理解をした。そこに本気で立ち向かう本藤親子のチャレンジを応援していきたいと感じました。
・一次産業を発展させるには、0次産業を整えないといけないことの繋がりは新しい学びだった。
・食のサステナビリティの問題は、身近に感じることから体験とセットで自分ごとになる反面、大きな問題をはらんでいるところが解決や行動変容が難しいと感じた。
・筏を支えるのに発泡スチロールが使われていてそれが崩れて海に漂流してるところを見て、その後サステナブルな漁具にはコストが掛かることなどを聞いで、とても複合的な課題があることを知りました。一朝一夕で解決できるようなものではなく、1人の声かけでどうにかなることでもなく、全ての立場で少しずつ譲歩し合うことであったり、本当に全員が同じ課題感を共有したり、行政が動く必要があるのではと感じています。

まとめ

ツアー全体フィードバック
・これからの会社組織は業績と同じくらい社会的意義を満たす必要があると感じる。この研修が、日本の大きな課題である地域創生の課題と解決案を個人レベルで考えるきっかけになればと思う
・普段は出会えない業種・職種の方とのディスカッションや交流の機会を通して、新たなアイデアのヒントが生まれたり、モチベーションに繋がったりという良い影響があった。
・自らの事業にも還元できる新しいアイデアを創造するヒントや地域事業者との繋がりを構築したい
・研修終了後もメンバーで本藤さんの言っていた宮津湾の泥パックの商品化について話し合った

今回のモニターツアーにより、都市部の企業が地域課題を知って関わり代を模索するきっかけになったのではないかと思います。
また、持続可能なビジネスを実践されている飯尾醸造や、環境を守るために第一線で活動されている八隅さん、澤さん、本藤さんのような地域のプレーヤーの方々から実際にお話をお伺いし、地域の課題や環境問題の深刻さを実際に目の当たりにすることで、各企業が自分事として「サステナビリティとは何か」という事について考える機会にもなったのではないかと思います。
今後もこの自然豊かな丹後地域で、様々な企業や個人の方々にこのような体験をしていただきたいです。

Writer:岸 あやか Ayaka Kishi(一般社団法人Tangonian)