~自然からいただく命と色で紡ぎだす草木染の智慧~

2021年12月25日、「丹後の智慧と紡ぎ手に出会うオンラインツアー Vol.5 ~和紙づくりと上世屋の暮らしの智慧~」が開催されました。

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【丹後の智慧と紡ぎ手に出会うオンラインツアーとは】
京都府北部に位置する丹後半島では、人々は昔から豊かな大自然と調和しながら、暮らし、働き、ものづくりをしてきました。
そこには永い年月を経て、紡がれてきた地域や暮らしの智慧が至るところに存在します。
そんな地域や暮らしの智慧を紡ぎ続ける魅力的な人々を紹介し、交流するオンラインイベントです。
主催:京都府丹後広域振興局(運営:一般社団法人Tangonian)

第5回目は、宮津市世屋へ身近な紙漉きのある暮らしに惹かれ移住し、和紙クリエイター・イラストレーターとして活躍されている山形 歩 様を講師にお迎えし、宮津市世屋の村の暮らしや和紙づくりについての智慧について語っていただきました。

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【講師】

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山形 歩(Ayumi Yamagata) 
いとをかし 和紙クリエイター・イラストレーター

大阪生まれ滋賀育ち。
成安造形大学芸術学科デザイン学部卒業後、マップ作成の仕事がきっかけとなり、京都府の里の仕掛け人事業を通じて宮津市世屋に移住。地区の紙漉きを営んでいた村との出会いをきっかけに、身近な紙漉きのある暮らしに惹かれ、2012年に“いとをかし”の屋号で事業を開始。

自然とともに暮らしていくこれからの世代での和紙の役割を試行錯誤する中で、モノそのものを提供するのではなく、和紙が存在することで生まれる光や空気感がそれぞれの暮らしにそっと寄り添えるものになることを目標としている。

目次

  1. 上世屋(かみせや)について
  2. 上世屋の暮らし
  3. 移住のきっかけ
  4. 和紙ができるまで
  5. 作品紹介
  6. 終わりに…

上世屋(かみせや)について

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上世屋は、京都府北部・丹後半島の東南部に位置する山間の小さな村です。
伝統的な造りの民家を中心に棚田広がり、周辺の里山林とともに美しい景観を醸し出しています。
現在、人口23人11世帯。
※引用:「ドチャック会議(上世屋定住促進協議会)」 

上世屋の暮らし

山形さん:朝起きると屋根の部分まで雪で埋もれていて、雪かきをしないと外に出られない。ちょっとした雪かきというよりは毎日がウィンタースポーツというくらい大変です(笑)

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移住のきっかけ

当時大学の芸出学科でデザインを学んでいた山形さんは、アルバイト先で沢山のモノが消費され廃棄されていくのを目の当たりにし、モノを新たに創り出すことの責任について意識するようになったそうです。
「日本ではまだ食べられるものも含め毎日大量の食べ物が廃棄されているが、世界では食べたくても食べられない人がいる。何故このような社会の流れになってしまったのだろう」と疑問を持ったことから、船で世界を一周できるピースボートに乗船することに。

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山形さん:この旅の中で様々な国を訪れ、自分の暮らしや日本を客観的に眺めるきっかけになりました。それにより足元にあるものの大切さを再確認することが出来たんです。

“心象絵図”との出逢い ~絵を通じて伝統や文化を紡ぐ~
山形さんは、ピースボートでの旅の後、「日本の文化や古くからあるものを、生業としてしっかり伝えていけるようになりたい」という気持ちが強くなったといいます。

失われていく日本の風土や文化の記憶を地図に描き表わしていく。
そんな心象絵図により、山形さんは伝統や文化を伝えることが出来る世代がいなくなっていったとしても、これらを守り続けられると考えました。

山形さん:心象絵図では四季や生死、地水火風を必ず書き込みます。これによりその地域が1つの小宇宙のように循環しているということが分かります。

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↑最近の上世屋の鳥瞰図

実際に絵を描くにあたって、その地域で過ごす方々がどんなものを食べてどんな服を着ているのかなどを知るため、京都府の里の仕掛け人事業を通じて宮津市世屋に移住。次第に地域の方々の昔ながらの暮らしをスケッチしそれをイラストにすることが生業になっていったそうです。

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山形さん: 絵を描くときは、五感で感じたことをスケッチするようにしています。

世屋と紙漉きの関係
現在は生業としては途絶えてしまっていますが、昔は世屋の畑という村のほぼ全ての家で農閑期に紙漉をしていた歴史があるそうです。

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和紙ができるまで

紙の原料となる楮

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大きな窯で蒸して表皮を剝きやすくします。ほのかに焼き芋のような甘い香りがしていました。

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トロロアオイというオクラの原種にあたる粘りの強い植物の根をすりつぶしたものを入れ、紙を作ります。

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オンラインツアーでは実際に紙を漉くところも見せていただきました。

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紙漉は農閑期である冬季に行われますが、紙を漉く際の水は雑菌を防ぎ粘りを保つために真水が用いられます。手がかじかむような寒さの中、本当に大変な作業です

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1日に漉ける和紙の数は50枚程度だそう。この大変な工程を見るとその数の少なさにも納得です。

作品紹介

山形さんの作る和紙には、村で身近に取れる素材や丹後地域の素材が沢山使用されています。

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↑落葉紙:こどもたちと落ち葉拾いをし拾った葉
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↑菜の花
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↑栗
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↑赤米
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↑琴引き浜の鳴き砂・藍
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↑髪飾り
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↑惑星ランプシェードオブジェ
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照明や花瓶も素敵です

終わりに…

和紙の魅力
最後に山形さんが考える和紙の魅力についてお聞きしました。

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山形さん:和紙は形あって無いような空気に近いものだと感じます。
そこにそれがあることによって周りの空気も変わっていく、
モノそのものではなく、そのような空気感を届けたいと思っています。

山形さんの作る和紙からは、自然に対する敬意や思いやり、また過酷な環境でも黙々と紙を漉き続ける彼女の真の強さが伝わってくるような気がします。

Writer:岸 あやか (一般社団法人Tangonian)

いとをかし ウェブサイト

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